ホステスさんの税金の法的根拠
1964年東京オリンピック開催に伴い、それまで社交員と呼ばれていたバー、クラブ、キャバレー等の女性従業員の事を「ホステス」と呼ぶ事が定着しました。
ホステスとは客を遇す専門的知識と技術を持った女性の職業と役割を示し、air hostessは、客室乗務員を意味していました。
なお、東京オリンピックでは外国政府高官などの接客をする者は社交係(ホステス)と呼ばれました。(一部ウィキペディア引用)
昭和42年当時の社交員は税金を申告し納税する人が少なく、国側で報酬料金という形で店側(支払者)に源泉徴収義務があると法制化されたのが始まりです。当時の基礎控除額については、当該支払金額の計算期間の日数に乗ずべき金額が2000円とされました。(基礎控除を設けているのは確定申告による還付の煩わしさを税務署側が避けるたためです。)
その他、プロボクサーの報酬や馬主が受ける競馬の賞金などもこのとき共に源泉徴収の対象とされました。
これらの報酬料金等に係る収入は固定的に発生するものではないので、確定申告の際に一時に納税するよりは、収入があった都度天引して納めておく方が納税しやすいという事情等を考慮したことによるとされています。
確定申告の事例
年間収入600万円のホステスさんの場合、店から税金(計算期間の日数に1日あたり5,000円控除を行い、所得税10.21%を乗じます)の計算を行うと、年間37万円(約6.2%)程度が所得税として店が天引きして税務署へ納付される仕組みになっています。(ホステスさんの年間収入等によりこの比率は1.0パーセント前後変動します。)
納付内訳を税務署とホステスさんへ渡しますので、ホステスさんは受け取った源泉徴収票(いわゆる納付証明のようなもの)を元に、翌年の3月15日までの確定申告期に個人事業主として必要経費を差引き所得を計算し、他の給与所得等があればそれと合算し、各種所得控除も行った上で申告納付します。(この部分は店がやるのではなく、税理士資格があるものが代理で確定申告するか、ホステスさんが自分自身で計算して確定申告を行うことになります。)
店によっては、ヘアメイク代を徴収したり、各々の雑費、送迎代、バンス代を控除して手取額が求められますが、これらの一部は必要経費となりますので内訳をとっておきましょう。このあたりは年末調整を会社側で行うサラリーマンとは仕組みがちょっと違ってきます。
その他ホステスさんが独自で購入したドレスや身の回りの品々、交通費や営業用の諸管理費を必要経費として差し引くことができます。
またホステスさんの場合、自分のお客様に対する売掛金回収の責任を負うことがあると思います。
焦げ付き、回収不能となった売掛金は、最終的に自分が店に弁済するケースがあり、その場合は貸倒損失として経費算入し、節税できる可能性がありますが、証拠や記録は税務署に対抗できるように取っておきましょう。又、年間収入が1千万円を超えると、消費税課税事業者となる問題が発生してきます。
確定申告するとどうなるか?
一般的な事例ですが、所得税は少しばかり還付になると思われます。しかし住民税や国民健康保険料算定上で翌年6月に思いがけない金額が請求されることになるので、注意が必要です。さらに最近は国民年金納付についての督促がとても厳しくなってきています。
又、高収入のホステスさんは所得税、消費税、事業税、住民税、国民健康保険料が個人事業主として課税又は賦課されます。
標準的な20代・昼間OLの女の子の場合
例えば、昼の仕事のみで年収280万円であれば、
・所得税 60,000円
・住民税 115,000円
・社会保険料 370,000円
以上の合計:545,000円程度が天引きされていると思われます。
その女の子が風俗(キャバクラやクラブ等の接客飲食店)で夜、アルバイトをするとします。
ホステスとして年間300万円程度を稼いだ場合、お店から130,000円程度、国税分として源泉徴収されていれば、各種必要経費を差引いて本人が翌年の3月15日に確定申告をすると、20,000円~30,000円程度、還付になります。
しかしながら住民税は150,000円程、追加で掛かると予想されます。
社会保険料は、昼の会社で天引きされていれば、夜の仕事の分は現行では影響しません。
店側(支払者側)やその他の注意点
店側の注意: 報酬料金として支払っているとは見なされずに、給与支給していると見なされるケースが散見されます。(キャバクラの女の子の報酬が給与であるとの指摘が多くなされるようになり、係争中案件も多数あります。)
雇用契約書を交わしていたり、単なる時給管理や固定的な給与や定額給として支給している、社会保険料を控除している等があると請負契約ではなく、雇用契約に基づく給与所得とされる場合があります。(その他、ホステスさんの経費としての負担がなされていない、責務の範囲がサラリーマンと同程度など)
参考までにサラリーマンとして給料と個人事業主の報酬として受給する場合の単純な税金の違い
月額50万円の給料の場合
源泉所得税額(甲欄扶養なし) 29,890円
〃 (乙欄 扶養控除申告書の提出なし) 136,400円
月額50万円の報酬料金の場合
源泉所得税額 (500,000-150,000)×10.21%→35,735円
その場合、女の子側は、必要経費は原則認められなくなるので、全体納付額では不利になる場合があります。
店側では、店自体の消費税申告の計算をする上で、不利な方へ影響を受けます。